Furuya: Report


レーシンググッズレポート
「レーシングシューズ」

photo
Naohiro Furuya
photo

クルマを運転する上で非常に重要な役割を持つレーシングシューズ。今回は古谷直広選手に「レーシングシューズ」に関するインタビューを行いました。レーシングドライバー歴20年を越える古谷選手がレーシングシューズに求めるポイントを探ってみましょう。

レーシングシューズとは?
普通の立って歩いたり走ったりのシューズとは違って、車のシートに座って床にかかとを置いて使うことを前提に靴底がかかとまでカバーされているのが特徴です。更にアクセル、ブレーキ、クラッチ操作が感覚的に理解し易いように靴底は非常に薄いんですよ。

普通のシューズでスポーツドライビングはできないのでしょうか?
不可能ではありませんが的確なペダル操作がしづらいと思います。靴底に厚さがあるシューズでペダルを踏み換える際、ブレーキペダル側面に靴が引っ掛かってブレーキが踏めずに慌ててしまった経験がある方も少なくないと思います。

photo

もし普通のシューズでスポーツドライビングする場合はなるべく靴底の薄くて凹凸の少ないもの、そして靴自体の素材が柔らかくよくしなるものを選んでください。

最近では(公認の問題で)競技用には使えませんが、スポーツドライビングに十分な機能をもった「ドライビングシューズ」なども発売されています。値段もレーシングシューズより安価なので走行会などに参加する方はドライビングシューズを利用するのもいいと思いますよ。

レーシングシューズが優れている点を教えてください。
靴底が薄いのでペダル感覚が素足に近付くため微妙なペダル操作を可能にしてくれます。これはレーシングスタートの際に非常に細かいアクセル開度の調整やクラッチミートの瞬間をとらえ、ブレーキングの際にはロック寸前の踏力を調整し、コーナーリングの際ではアクセル操作でタイヤのスライド量を調整する為には欠かせない条件です。

私の場合、各ペダル操作は「足の親指で調整する感じ!」だから普通のシューズよりは地下足袋の方がよっぽどいいかもしれないですね(笑)

その他の点としては、耐火性。レースに参戦するには耐火素材で作られたレーシングシューズの着用が義務づけられています。

レーシングシューズにハイカットが多いのは、出火やクラッシュ時に足首を保護するためです。フォーミュラカーの場合、元々足下のスペースがギリギリなのでクラッシュ時に足を打ち付けてしまうことがあります。一般のクルマの場合はローカットでもハイカットでも大丈夫。好みに合わせて選んでください。

最近、色々な走行会やツーリングでも本格的なレーシングシューズを愛用している方が多いことを見てもレーシングシューズがいかに運転に適しているかが伺えます。一度履いてしまうと手放せなくなります。

レーシングシューズのデメリットはありますか?
photo 運転に関しては非常に優れているレーシングシューズですが、実は「歩くこと」には向いていません。あまり長時間の歩行は足を痛める場合もあるので運転しないときは普段履きの靴に履き替えた方がいいと思います。そうすればレーシングシューズも長持ちするので一石二鳥です。

そういう点では先ほどご紹介した「ドライビングシューズ」の方が歩行に向いています。値段が安くて、歩行もドライビングも一足でこなせるという意味ではオススメですね。

私も走行会やレッスンの時は「ドライビングシューズ」を使っています。

レーシングシューズに関するエピソードなど聞かせてください。
極限のレーシングカーになるとレーシングシューズに求められる条件は更に厳しくなります。

私がカート・レースからフォーミュラカーレースにステップアップしてからは、FL-B、 イタリアF2000、全日本F-3、全日本F3000(現在のフォーミュラニッポン)そして全日本GT選手権と歩んできましたが、特にF3000の経験の中ではシューズに対するハッキリとした要望が生まれました。

photo

F-3までは自分にピッタリと思っていたレーシングシューズでF3000に乗ってみると、ブレーキング時にシューズの中で足先が動いてずれてしまってヒールアンドトゥもやりずらい。つまりシューズのサイズが微妙に大きかったんですね。

F3000のペダル操作はそれまでのレースカーよりもハードで、特にフルブレーキング時には重く、シューズや足にはかなりの負担となるので、シューズの横方向がピッタリとフィットして靴底が硬い物が必要となります。

困ったことにF3000マシンは空気力学も考慮に入れ設計されているので、車体は非常にスリムに出来ているのでコクピットの足下の空間もかなり狭いんです!

体型やポジションにもよるのでしょうけど、僕の場合は走行中アクセルからブレーキに足を移す際にシューズ先端がステアリングシャフトに引っ掛かってしまいました。つま先自体はシャフトに当たらないのですがシューズ先端が当たってしまうのには参りました(笑)

こんな時はシューズの縦方向がピッタリとフィットしていれば良いのでしょうけど、そんな縦も横もフィットするシューズなんて特注する以外ありません。とりわけ私の足形は欧米人風の縦長ではなく日本人風の横広!特注にするかシューズ先端を切るか足を削るか?

結局ワンサイズ小さいシューズを試してみました。横幅がきつく、とても痛くて歩ける状態ではありませんでしたが、ドライビングには丁度良かったんです。やはり歩くという観点から靴を選ぶのと、ドライビングという観点から選ぶのとでは答えが一致しないんですね。

photo

レーシングシューズは自分の愛車のペダル配置や、自分の操縦性にあったもので尚かつ好みのデザイン、カラーで自分をアピールしたいもの。そして自分の足形にあったフィット感のある物がベストです。

個人的な意見ですけど、レーシングシューズって機能面で非常に優れているだけでなくデザインがとても格好いいと思うんです。レーシングスーツを着ても靴がレーシングシューズじゃないと何か物足りない気がします。僕の場合、未だに「レース=憧れの世界」ですからやはりカッコ良くないとね! ってことで一足だけじゃ気が収まらず、色々なシューズをその日の気分で履き替えている古谷でした。


Nao.Furuya 2003.3.9

Top PageProfileRacing DriverInstructorAdviserReportLinkBBS
Copyright (C) 2002, Naohiro Furuya, All Rights Reserved.